相続人が誰もいない場合の相続手続き3つのポイント

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厚生労働省の調査によると、600万人ちかい高齢者がひとり暮らしをしています。
10年前と比較すると1.5倍に増加しているとみられます。
また、高齢者の未婚率、離別率も上昇傾向となっています。
調査結果を受けて厚生労働省は、「今後も高齢世帯や独居世帯の増加は続くだろう」と分析しています。

もし相続が発生して、相続人が誰もいない場合、被相続人が残した財産はどうなるのでしょうか?
今回は、相続人が誰もいない場合の相続手続きについて見ていきましょう。

1.相続人不存在

相続人が誰もいない場合を「相続人不存在」といいます。
「相続人の不存在」は、民法において「相続人のあることが明らかでないとき」と定められていますが、最終順位の相続人が欠格、廃除、放棄によって相続権を有しなくなった場合など「相続人のないことが明らかな場合」も相続人不存在として扱われています。
具体的には、次のような場合をいいます。

  • 相続人となるべき人がすでに死亡しているなど、戸籍上見当たらない場合
  • 相続人全員が相続放棄をした場合(相続欠格、廃除によって相続資格を失っている場合も含みます。)
なお、次のような場合は、「相続人不存在」に該当しません。
  • 相続人が行方不明や生死不明である場合
  • 相続人がいない場合であっても、全財産が遺贈されている場合

2.相続人不存在の場合の手続き

相続人不存在の場合、民法の規定により、被相続人の相続財産は法人となり、相続財産を管理する人=相続財産管理人が選任されることになります。
相続財産管理人について、一般的には居住地域の近くで活動している弁護士が選任される傾向があるようです。
相続人不存在の場合において、相続財産の管理と清算が重要であるため、相続財産の管理人を選任する必要があります。この管理人が誰にとっての代理人になるか、権利関係が錯綜することを避けるため、相続財産を法人とする必要が生じます。
相続人不存在の場合、被相続人の相続財産は、一定の手続きを経て、すべて清算されたり、国のものになったりします。
手続きについて、詳しく見ていきましょう。

相続人不存在の場合の手続きの流れ

相続人不存在 管理人選任

被相続人の利害関係人(債権者、受遺者、特別縁故者など)からの請求により、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。
なお、利害関係人からの請求がない場合は、検察官がこの請求をします。

相続財産管理人の選任後

相続人不存在 公告1

家庭裁判所は、相続財産管理人が選任されたこと、もし相続人がいれば名乗り出るよう、官報で公告します。
この公告期間は、2ヶ月です。

2ヶ月以内に相続人が現れない場合

相続人不存在 公告2

相続財産管理人の選任の公告があったあと、2ヶ月以内に相続人が現れない場合、相続財産管理人は遅滞なく債権者や受遺者に対して2ヶ月以上の期間を定めて、申し出るよう公告します。
なお、すでに分かっている債権者には、格別の債権申し出の催告をします。

相続人不存在 清算

債権の申し出期間中に、債権者や受遺者からの申し出があった場合、債権者・受遺者への清算に移ります。
弁済は、次の順位で行われます。

相続人不存在 弁済の順位

債権の申し出額が相続財産を上回る場合は、配当弁済をすることとなります。

2ヶ月以上の債権申し出期間内に、なお相続人が現れない場合

相続人不存在 公告3

債権申し出期間が満了後、なお相続人が現れないときは、清算と並行して、管理人の請求によって、家庭裁判所は6か月以上の期間を定めて「相続権主張の催告」をします。
この公告は、相続財産管理人または検察官の請求により、家庭裁判所が行うものです。
この公告をなすべき時に、相続財産が全部清算されて残余財産がない場合には、この公告をする必要はないとされています。
なお、残余財産がある場合、その後に現れた債権者・受遺者は、この期間内であれば弁済を受けられます。

6ヶ月以上の公告期間が経過したとき

相続人不存在 確定

相続人不存在が確定してから3ヶ月以内

相続人不存在 特別縁故者

特別縁故者の申立てにもとづき、相続財産の全部または一部が分与されます。
特別縁故者への財産分与については、「3.特別縁故者への財産分与」で詳しく説明します。

清算、財産分与後に残余財産がある場合

相続人不存在 国庫帰属

3.特別縁故者への相続財産分与

特別縁故者は、相続人不存在が確定してから3か月以内であれば財産分与を請求することができます。
これは、相続人不存在の場合に、相続財産を国庫に帰属させるより、被相続人と特別な縁故関係にあった者に与えたほうが、被相続人の遺志にもかなうとして、昭和37年の民法改正によって新設されました。
特別縁故者が、相続財産を分与をしてもらうには、家庭裁判所へ申立てをしなければなりません。
相続財産を分与するかしないか、また、一部分与か全部分与かについては、家庭裁判所の裁量によります。

特別縁故者とは?

特別縁故者として認められるのは、次のような人をいいます。

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養看護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故があった者

代表的な例として、内縁の妻や事実上の養子があげられます。

まとめ

相続人が誰もいない場合の相続手続きについて、流れをおさらいしましょう。

相続人不存在 まとめ用

今後も高齢世帯や独居世帯の増加が予想されています。
相続人がいない場合、どのような手続きが必要か押さえておきましょう。

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