相続が発生すると、被相続人の財産は相続人が引き継ぐことになります。
では、相続人とはいったい誰のことを指すのでしょうか?
相続人は、相続手続きにおいて基本的事項ですが、きちんと理解しておかなければ、相続が「争族」となってしまうかもしれません。
今回は、相続人について見ていきましょう。
☆☆参考☆☆遺留分に関する情報はこちら
◆予想外の遺言に救いの手あり。法的に財産を確保する遺留分(いりゅうぶん)とは?
1.法定相続人
2.各相続人の法定相続分
3.法定相続人・法定相続分における注意点
4.代襲相続分
5.相続欠格と相続廃除
6.相続が「争族」になりやすいケース
1.法定相続人
民法において、相続人になれる人が定められており、それを法定相続人といいます。
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。
配偶者以外の人は、以下の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
2.各相続人の法定相続分
「どの相続人がどの程度の相続財産を受け継ぐか」について、民法で原則が設けられています。
この民法によって定められている相続分のことを「法定相続分」といいます。
ただし、必ずしも法定相続分通りの遺産分割をしなければならないわけではありません。
3.法定相続人・法定相続分における注意点
●配偶者
ここでいう配偶者とは、婚姻届を提出している正式な場合に限られます。
したがって、内縁の配偶者や愛人は含まれません。
●子
①胎児
民法において、胎児は既に生まれているものとみなされ、相続人になります。
②嫡出子と非嫡出子
嫡出子とは、結婚している男女の間に生まれた子をいいます。
非嫡出子とは、結婚していない男女の間に生まれた子をいいます。
非嫡出子の法定相続分について、かつては嫡出子の2分の1と定められていましたが、現行の法律では、嫡出子の法定相続分と同等とされています。
③離婚した元配偶者との間の子
元配偶者との間の子は、実子に変わりないため、相続人になります。
④配偶者の連れ子
配偶者の連れ子(例えば、妻の前夫との間の子など)は、被相続人とは血縁関係がないため、相続人になりません。
相続人にするためには、配偶者の連れ子と養子縁組をする必要があります。
●直系尊属
直系尊属とは、「父母」や「祖父母」などのことをいいます。
①父母
ここでいう「父母」とは、養子縁組をした養父母も含みます。
②祖父母
「祖父母」は、「父母」よりも血のつながりが遠いため、「父母」両方が存在しないときにのみ相続人となります。
例えば、父は既に他界しており、母のみ存在する場合、母が相続人となり、祖父母に相続権はありません。
※第2順位の直系尊属は、第1順位の子がいないときに相続人になります。
●兄弟姉妹
①全血兄弟
全血兄弟とは、父母ともに同一とする兄弟をいいます。
②半血兄弟
半血兄弟とは、父又は母の一方のみを同じくするに過ぎない兄弟をいいます。いわゆる異父兄弟・異母兄弟のことです。
半血兄弟の法定相続分は、全血兄弟の2分の1となります。
第3順位の兄弟姉妹は、第1順位の子、第2順位の直系尊属がいないときに相続人になります。
兄弟だけが相続人の場合に半血兄弟がいる場合
配偶者と兄弟が相続人の場合に半血兄弟がいる場合
4.代襲相続分
代襲相続とは、被相続人の死亡する前にすでに相続人が死亡していたり、相続欠格や相続人の廃除(後述)があった場合には、その者の子や孫が代わって相続することをいいます。
代襲相続は、子と兄弟姉妹に認められており、直系尊属には認められていません。
子は、何代でも代襲することができますが、兄弟姉妹の場合は、甥・姪までです。
5.相続欠格と相続廃除
相続欠格と相続廃除は、ともに相続人の相続権を失わせる制度です。
●相続欠格
相続欠格とは、一定の事由に該当する場合、法律上当然に相続人の資格を失うことをいいます。
なお、相続欠格者となると、同時に受遺者としての資格も失うことになるため、遺贈を受けることもできなくなります。
相続欠格となった者に子がある場合は、代襲相続することができます。
●相続人の廃除
相続廃除とは、法律上当然に相続人の資格を失う相続欠格と異なり、被相続人の意思により相続人の資格を剥奪することをいいます。
相続廃除の方法は、被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てる方法と、遺言による方法の2つが認められています。
相続廃除となった者に子がある場合は、代襲相続することができます。
6.相続が「争族」になりやすいケース
相続人関連で、相続が「争族」になりやすいケースを3つ紹介します。
①元配偶者の子や非嫡出子がいる場合
離婚した元配偶者の子や、婚姻関係のない男女の間に生まれた子(愛人の子など)も、「子」であることに変わりないため、相続人となります。
元配偶者の子や非嫡出子は、他の相続人にとって、その関係性から感情的になり、トラブルに発展しやすいといえます。
また、相続人が、元配偶者の子や非嫡出子の存在を知らされていないケースもあり、相続発生後、トラブルとなる可能性があります。
②子がいない夫婦の場合
子がいない夫婦の場合、相続人は、遺された配偶者と、被相続人の父母などの直系尊属又は兄弟姉妹となります。
もし、相続人が遺された配偶者と被相続人の父母である場合、配偶者と被相続人の母、つまり「嫁と姑」の関係でトラブルに発展することが考えられます。
一方、相続人が遺された配偶者と被相続人の兄弟姉妹である場合についてです。相続人になる兄弟姉妹のうち、すでに亡くなっている者がいる場合、その子、つまり甥・姪が代襲相続人になります。
そうなると、何年も会っていない甥・姪と、遺産分割をしなければならない、などのケースも想定され、相続手続きが難航する可能性があります。
③複数いる子のうち1人が親(被相続人)の面倒をみていた場合
子が複数いる場合で、もめるケースとして、複数いる子のうち1人が親(被相続人)の面倒を見ていた場合があげられます。
例えば、長男と次男の2人兄弟とします。
それぞれ結婚して家庭を築いており、親の近くに住んでいた次男が、親の面倒を最期まで看ていました。
親の死亡後、相続人は、長男と次男の2人です。
次男としては、「最期まで親の面倒を看たのだから、当然兄より多く相続する」との思いがあるでしょう。
しかし、長男が、「この家の長男は自分だから、次男である弟より多く相続するのは当然だ」と主張する可能性があります。
そうなると、親の生前は仲の良かった兄妹も、相続が「争族」となってしまいます。
まとめ
最後に、相続が「争族」とならないためにはどうしたらよいか考えてみましょう。
①生前に話し合いをしておく
推定被相続人から、相続が発生したら財産をどうしたいのか意思を伝え、相続人間で話し合うことはとても重要です。
話し合いの前には、エンディングノート等を活用し、相続人は誰か、遺産はどれくらいなのか、どのように遺産分割をしたいかなど、整理しておくと伝えやすいでしょう。
②相続対策を行う
話し合いをして、生前贈与や遺言書の作成など、相続対策を行っておきましょう。
話し合いの結果、相続でもめることが想定される場合や、上記6.相続が「争族」になりやすいケースに該当する場合は、特に相続対策が重要となります。
「相続で争うなんて、お金持ちだけなのでは…」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、「私の親族は仲も良いし大丈夫!」と言い切れないのが相続なのです。
仲の良かった親族間で、泥沼の相続問題が発生…というのは、よくある話なのです。
相続対策には、様々な方法がありますが、まずは生前に話し合いをして、推定被相続人の意思を伝えておくことが重要です。