遺産分割において、誰が何を相続するかはとても重要です。
遺産分割は遺言書があればその内容に従って、遺産を分割します。
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行い、各遺産の取得者を決めます。
遺産が現預金のみであれば、スムーズに分割できますが、実際の相続においては不動産、現預金、株式など、遺産は多岐にわたります。
では具体的にどのように分割方法があるのでしょうか。
今回は、遺産分割の4つの方法について詳しく見ていきましょう。
☆☆参考☆☆相続財産に関する記事はこちら
◆相続財産を正しく理解する4つのポイント!
1.遺産分割の4つの方法
2.遺産分割のメリット&デメリット
3.代償分割の活用
1.遺産分割の4つの方法
遺産分割には4つの方法があります。それぞれにメリット、デメリットがありますが、そのポイントをよく理解して、相続人間で十分に話しあって分割方法を決めることを心がけてください。
①現物分割
遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法をいいます。もっとも単純でわかりやすい分割方法です。
例えば一定の面積の土地を相続人それぞれの持分に応じて分筆して分けたり、預貯金などは相続人のAに、不動産は相続人のBに分けるという方法です。
普段から家族で話し合いをしている場合には、この「現物分割」で解決してしまうケースも少なくありません。
②換価分割
遺産の種類によっては、現物分割を行うことが適当でないケースがあります。
例えば、戻る予定のない田舎の土地や、維持費の係る高級車など、必ずしも財産を現状のままでは、受け継ぎたくない、又は、受取れないような場合に遺産を他に売却して金銭に換え、この金銭を相続分に応じて分割する方法を換価分割といいます。
ただし、すぐに買い手が見つかるとは限りませんし、また、思うような価格では売れない場合もありますので、あらかじめそのような場合も想定して対策を考える必要があります。
③代償分割
ある相続人が全ての遺産を相続するかわりに、他の相続人に対してその相続人の相続分に応じた金銭を支払う、又は、自分の所有する他の財産を交付する方法を代償分割といいます。
亡くなった方の家や土地、会社を経営していた場合だったら会社の株式などを相続人の1人が引き継ぐというケースなど、代償分割は分割しにくい財産の対処法としてよく用いられます。
また、支払を行う側には相応の資力が必要となるため、事前の準備が必要となるでしょう。
なお、代償分割をする場合には、その旨を遺産分割協議書に記載する事が必要があります。もし記載がなければ、通常の贈与とみなされてしまい贈与税が課税されてしまうおそれがあるため注意しましょう。
④共有分割
共有分割は各相続人の持分を決めて共有で分割する方法をいいます。
不動産などを公平に相続分に応じて分割することができますが、将来的に相続人が死亡した際にさらに共有者が増えることになる等、後にトラブルを生む可能性がある点に注意を払うことが必要です。
2.遺産分割のメリット&デメリット
3.代償分割の活用
上述のとおり、「代償分割」とは、特定の相続人が特定の遺産を取得しますが、その者は他の相続人に対する代償債務を負担するという、遺産分割の方法の一つです。
財産を細分化するのが不適当と考えられる事業用不動産、同族会社の株式又は農地等を相続する場合に、よく利用されます。
代償分割は、分割が困難な財産を相続人間でとりあえず「共有」にしておいて分割問題を先送りにするのでなく、後継者など特定の相続人の単独所有としても相続人間で合意が得られるので、将来の「争族」回避対策にも役立ちます。
金銭以外の交付も可能
代償債務は金銭の支払いが一般的ですが、不動産の交付や債権を移転するという債務負担の方法もあり、この場合、交付する代償財産が譲渡所得の対象資産なら、代償債務者の譲渡所得として課税が発生します。
代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合
代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合には、遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転となるので、その履行した人については、その履行の時における時価によりその資産を譲渡したことになり、一方、代償財産として不動産を取得した人については、その履行があった時の時価により、その資産を取得したことになります。
- 遺産分割協議書に代償分割の交付内容を明記する。
- 代償財産が相続人固有の不動産の場合、譲渡所得を生じる財産であるため、これらを時価で売却したものとみなされ、計算上利益が出る場合、財産を交付したものには、この利益に対して、譲渡所得・住民税が課されます。
- 一方この財産を取得した者には、不動産取得税と登録免許税が課されます。この場合の登録免許税は、相続の場合の0.4%ではなく、2%となります。
代償資金の準備
代償資金として、遺産分割協議の対象とならない財産、いわゆる「みなし相続財産」である「生命保険金」や「死亡退職金」が役立ちます。特定の財産を受取るものが、生命保険金や死亡退職金の受取人となることで、代償資金として不足分を補うことができます。
死亡保険金が代償分割の代償資金とならない場合に注意
死亡保険金を代償資金として活用する方法がありますが、場合によっては代償資金とならず贈与税が課せられる場合があるので注意が必要です。
次の事例をご覧ください。
なぜ贈与税が課せられるのでしょうか。
生命保険金は、受取人固有の財産(みなし相続財産)であり、本来の相続財産は現預金のみです。
長男は、「本来の相続財産」を相続していないことになるので、この場合、長男から二男へ、贈与により財産が移転したものと見なされます。
つまり、長男は「本来の相続財産」を取得しないことから、取得した「本来の相続財産」の調整の為の代償分割は起こらないのです。
もし、不動産等を取得して、それに代えて保険金から、代償金を支払うのであれば、贈与税の課税はありません。
まとめ
遺産分割には4つの方法がありますが、それぞれのメリット、デメリットを理解した上で、それらを上手に活用し遺産分割を行うことは、安心の未来を遺すことになります。
代償分割は、事業承継における経営資源や不動産など、特定の相続人に分割することなく財産を遺したいときなどに多く利用されますが、代償資金の確保や、その交付による贈与税や所得税の課税には注意が必要です。
相続税の申告と納税までは、原則として10ヶ月しかありません。この期間内に協議が整うよう相続人同士で譲り合い、期間内に分割協議が成立するよう努力する必要があります。