遺産分割協議が調わない場合、どうしたらよいのでしょうか?
家庭裁判所に調停を申し立てることができます。それでも調わないときは、審判を求めることができます。
【遺産分割協議が調わない場合】
相続人間で遺産分割協議が調わない、又は協議をすることができない場合、家庭裁判所に請求して、調停分割又は審判分割とすることができます。
調停分割、審判分割のいずれを申し立ててもかまいませんが、実務上は、調停を申し立てるケースがほとんどといわれています。
遺産分割協議は、すべての遺産について成立しないと有効ではないのでしょうか?
いいえ。一部分の遺産についてのみ成立した場合も有効です。
【遺産分割協議の成立】
遺産分割協議は、一部分の遺産についてのみ成立した場合も有効です。
相続人全員が、異議なく、遺産分割協議書に署名・捺印をして、遺産分割協議は終了しました。申告期限までは、まだ時間があるのですが、いつでも再分割の請求はできますか?
いいえ。特別な事情がない限り、再分割の請求はできません。
【再分割の請求】
遺産分割協議書に、全員が異議なく署名・捺印をした場合には、遺産分割協議は完全に終了し、特別な事情がない限り、再分割の請求はできません。
協議分割は、共同相続人全員の協議によって分割する方法だと聞きました。分割は、法定相続分に従わなければならないのでしょうか?
協議分割による分割は、法定相続分に従わなくてもかまいません。
【法定相続分】
①配偶者と子供が相続人である場合
配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2
②配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3
③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4
④兄弟姉妹が相続人の場合
全ての兄弟姉妹は同順位での相続権を有するが、父または母の一方のみを同じくするに過ぎない兄弟、いわゆる異父兄弟・異母兄弟(半血兄弟)も相続人です。
半血兄弟は、父母ともに同一とする兄弟(全血兄弟)の相続分の1/2となります。
※なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。
※また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。
父が亡くなり、遺産分割について話し合っています。そう遠くない将来に母の相続も発生すると予想されます。母の相続の時に相続税の負担を軽減するために、父の相続はどのようにしたらよいのでしょうか?
お母様の相続の時に相続税の負担が軽減出来るように、将来値上がりすると思われる財産は、お子様が相続し、値上がりしない又は下落すると予想される財産・消費される財産は、お母様が相続するという方法があげられます。
相続発生後でも、遺産分割の工夫により、相続税等を軽減させることは可能です。
【次の相続の軽減を考えた遺産分割】
第二次相続が、そう遠くない将来に発生すると予想される場合、第二次相続の時に相続税の負担が軽減出来るように、今回の相続時に、将来値上がりすると思われる財産は子が、値上がりしない又は下落すると予想される財産・消費される財産は配偶者が、それぞれ相続します。
夫が亡くなり、子どもたちとこれから遺産分割について話し合います。配偶者の相続分で留意すべきことを教えてください。
今後発生すると予想される二次相続の相続税負担の軽減と配偶者の生活確保を優先することがポイントです。
《配偶者の相続分》
配偶者が遺産を相続した場合、配偶者の税額軽減制度が設けられていることから、配偶者が相続税を納付しなければならないケースは少ないと思われます。
質問のような配偶者と子のいる相続では、親の世代から子の世代に財産が承継される時に、子に対して相続税が課されることになり、子の世代に全ての財産が承継されて初めて相続税の納税義務は完結することになります。
したがって、第一次相続(夫)が発生したとき、妻がどういう種類の財産をいくら相続するかは、第二次相続(妻)に大きな影響があります。
【配偶者の相続に適している財産】
(1)第二次相続時の相続税負担が軽くなるように
①値上がりしない又は下落が予想される財産
②消費される財産(現金預金等)
(2)配偶者の生活の安定を図り老後生活の安心のために
①日々の生活に密着した居住用不動産
②現預金
③安定した収益を生む不動産
遺産分割を禁止することはできますか?
相続人全員の合意によって、遺産分割を禁止することができます。
【相続人の合意による遺産分割の禁止】
相続人全員が合意すれば、遺産分割を禁止することは可能です。
遺産分割は、遺産共有状態の解消を目的とした各遺産の配分手続ですので、その共有者である相続人全員が、合意によって共有状態の解消を先延ばしにすることが認められています。
先日亡くなった母の遺言が見つかりました。遺言に「遺産分割の禁止」をする旨が記載されていましたが、これは有効なのでしょうか?
お母様の遺言が、法律に従った方式のものであれば、「遺産分割の禁止」は有効です。
被相続人は、遺言において5年以内の期間で「遺産分割の禁止」をすることができます。
遺言のみで法的効力が生じるものとして、他にも相続分の指定及びその委託や、遺産分割の方法の指定及びその委託があります。
不動産を相続する者がなく、共有により分割することを検討しています。
共有により分割した場合に想定されるトラブルなどはありますか?
不動産を共有とすると、共有者全員の同意がなければ、換金処分等の手続ができず、不動産の活用を巡り、将来争いに発展する可能性が想定されます。
《不動産の共有による分割》
共有(名義)不動産とは、複数人が所有権を持ち合っている状態のことをいいます。「他の共有者全員の同意」を得なければ、以下の手続ができません。
①土地が共有の場合 : 土地の利用形態・形質の変更、建築など。
②建物が共有の場合 : 家屋取り壊し、大規模改造、新築への建替えなど。
③共有不動産全体の売却など。
【不動産の共有による分割の活用】
配偶者と子1人との共有なら、配偶者に相続が発生した時、共有者である子がその持分を相続すれば、将来単独所有とすることも可能で、「争族」への発展を防げます。
相続人は、姉と長男である私の2名です。代償分割により、姉から取得した代償財産は、贈与税が課税されるのでしょうか?
いいえ。相続税の課税対象になります。
《代償分割》
相続人間の税負担を公平にする方法として、代償分割があります。これは、相続税負担の少ない人が相続税負担の多い人に代償金を支払い、実質的な負担額を同額にしようとするものです。
【代償分割により取得した代償財産】
代償分割により取得した代償財産は、被相続人から承継取得したものではありませんが、遺産分割協議により発生した債権に基づいて取得することから、実質的には、相続によって取得したものと同様であるため、相続税の課税対象となります。
遺言で「遺産分割の禁止」をすることはできますか?
はい。遺言で、5年以内の期間であれば「遺産分割の禁止」をすることができます。
【遺言による遺産分割の禁止】
被相続人は、遺言で「遺産分割の禁止」をすることができます。
※ただし、期間は5年以内です。
特別代理人とは何ですか?
特別代理人とは、親権者と子など、通常の法定代理人の利益と本人の利益が衝突する場合に選任される人をいいます。
特別代理人とは、親権者と子など、通常の法定代理人の利益と本人の利益が衝突する場合に選任される人をいいます。特別代理人は、法定代理人である親権者が子の住所地の家庭裁判所に申立てをして、審判の手続で適切な人を選任してもらいます。
夫が死亡し、相続人は妻である私と未成年の子が1人です。遺産分割協議をするにあたって、未成年の子の相続分は、親権者である私が決めてよいのでしょうか?
親権者であるあなたでは、未成年者の子と利益相反する可能性があるため、特別代理人を選任する必要があります。
【配偶者と未成年の子が相続人である場合】
親権者(後見人)の利益になるが、未成年者(被後見人)にとっては不利益になる行為(利益相反行為)に該当するため特別代理人が必要となります。
親権に服する未成年の子が複数の場合、一方には利益になるが他方の子にとっては不利益になることも考えられるので、複数の特別代理人が必要となります。
寄与分とは、何ですか?
寄与分とは、被相続人の財産の維持又は形成に特別の寄与・貢献をした相続人に対して、その寄与に相当する額を加えた財産の取得を認める制度です。
【寄与分とは】
被相続人と共同して農業や商店の経営に従事してきた相続人のように、特定の相続人が、被相続人の財産の維持または形成に特別の寄与、貢献した場合に、その相続人を、寄与や貢献のない他の相続人と同等に取り扱い、法定相続分どおりに分配するのは、公平を失することになります。
このような場合に、寄与者に対して寄与に相当する額を加えた財産の取得を認める制度を、寄与分といいます。
寄与分といえるためには、寄与行為の存在によって、被相続人の財産の維持又は増加があること、寄与行為が特別の寄与といえることが必要です。
「みなし相続財産」とは何ですか?
「みなし相続財産」とは、相続税の手続において、被相続人の財産ではないにもかかわらず、相続財産として相続税の課税対象となる財産のことです。
例として、被相続人の死亡を原因として相続人に支払われる生命保険金、死亡退職金などがあげられます。
【みなし相続財産】
相続税の手続において、被相続人の財産ではないにもかかわらず、相続財産として相続税の課税対象となる財産のことです。
これらの財産は、被相続人が生前から持っていた財産ではないため、民法上は相続財産として「遺産分割協議の対象」になりません。
みなし相続財産の例:被相続人の死亡を原因として相続人に支払われる死亡保険金や死亡退職金など
相続人間で相続税負担に差が出てしまい、トラブルになりそうです。
何か解決方法はないでしょうか?
遺産分割方法を代償分割とし、相続税負担の少ない人が相続税負担の多い人に代償金を支払うことで、解決できる可能性があります。
《代償分割と相続税負担の公平化》
【代償分割による対策】
相続人間の税負担を公平にする方法として、代償分割があります。これは、相続税負担の少ない人が相続税負担の多い人に代償金を支払い、実質的な負担額を同額にしようとするものです。
【税負担の公平化】
相続税負担の差額分を単に贈与する場合には、贈与税が発生することが考えられるため、さらにトラブルが大きくなる可能性があります。
そこで、税負担の差額に相当する金額とそれにかかる相続税を加味して両者の総支出が同額になるように代償金を支払いことで相続税負担の公平を図ることができます。
相続財産の中に、遺産分割を禁止したい財産があります。その財産だけ遺産分割を禁止することはできないのでしょうか?
できます。遺言書によって特定の相続財産について遺産分割を禁止することが可能です。
【遺産分割の禁止の範囲】
全相続財産を遺産分割の禁止の対象にすることも、特定の相続財産についてのみ遺産分割を禁止することも可能です。
被相続人は、 遺言によって、5年以内の期間を定めて、 遺産の全部又は一部についてその分割を禁止することができます。 遺産分割の禁止は、遺言によって行わなければならず、 それ以外の生前行為で指定することは認められません。
遺産分割の方法には、現物分割、換価分割、代償分割があると聞きました。協議分割の場合、どの方法でもよいのでしょうか?
はい。協議分割において、現物分割、換価分割、代償分割、どの方法を採用してもかまいません。
【遺産分割の方法】
遺産分割の方法には、現物分割、換価分割および代償分割があります。協議分割においては、どの方法を採用してもかまいません。
換価分割とは、どのような分割方法ですか?
換価分割とは、相続財産の「全部または一部」を処分して、その処分代金を共同相続人間で分割する方法です。
【換価分割】
遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法を現物分割といいますが、遺産の種類によっては、現物分割を行うことが適当でないケースがあります。このような場合に、遺産を他に売却して金銭に換え、この金銭を相続分に応じて分割する方法が、換価分割です。
現物分割とは、遺産をどのように分割する方法ですか?
現物分割とは、遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法です。
【現物分割】
遺産をそのままの形で相続分に応じて分割する方法を「現物分割」といいます。
例えば、例えば一定の面積の土地を相続人それぞれの持分に応じて分筆して分けたり、不動産は相続人のAに、預貯金などは相続人のBに分ける、といった分割方法です。
遺産分割協議を既に終えていますが、新たに遺産を発見しました。
既に終えている遺産分割協議は、始めからやり直さなければならないのでしょうか?
いいえ。新たに発見した遺産についてのみ、遺産分割協議を行います。
【遺産分割協議後に発見された遺産】
いったん有効に成立した遺産分割協議は、特別な理由がない限り、相続人は合意した内容に従う義務があり、後になってやり直しを求めることができないのが原則です。したがって、新たに発見された遺産についてのみ、遺産分割協議を行うことになります。
ただし、遺産分割協議後に新たに発見した遺産が、相続人にとって重要なものであり、相続人の誰かが錯誤による無効を主張した場合は、最初から遺産分割協議をやり直さなければならないケースもあります。
いったん有効に遺産が分割され、相続登記のみ行っていない遺産を再分割します。この場合、相続人間における贈与があったものとされるのでしょうか?
はい。相続人間における贈与があったものとして、課税されます。
【未登記の遺産】
分割協議は調っているにもかかわらず、単に相続登記が行われていない場合、再分割を行うことはできます。ただし、相続人間における贈与があったものとして課税されるため、注意が必要です。
代償分割により代償金を支払って土地を相続しました。
相続した土地を譲渡しようと検討しています。もし譲渡した場合、他の相続人に支払った代償金は、取得費として譲渡価額から控除することはできないのでしょうか?
他の相続人に支払った代償金は、取得費として譲渡価額から控除することはできません。
【代償金を支払って取得した土地の譲渡】
相続後にその土地を譲渡した場合、その者が他の相続人に支払った代償金は、その譲渡所得の金額の計算上、取得費として譲渡価額から控除することはできません。 代償交付した相続人は、取得した財産価額から代償債務として代償交付した財産の価額を控除しています。
【代償分割】
特定の相続人が全ての遺産を相続するかわりに、他の相続人に対してその相続人の相続分に応じた金銭を支払ったり、自分の所有する他の財産を交付する方法をいいます。
代償分割は分割のしにくい財産の対処法としてよく用いられていますが、支払を行う側には相応の資力が必要となります。
代償分割をする場合には、その事を遺産分割協議書に記載する事が必要です。
代償財産として、従来から所有していた土地を交付しようと考えています。
この場合、時価で譲渡したものとみなされるのでしょうか?
はい。時価で譲渡したものとみなされ、所得税が課税されます。
《相続人固有の不動産を代償財産として交付する場合》
代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合には、遺産の代償分割により負担した債務を履行するための資産の移転となります。
その履行した人については、その履行の時における時価によりその資産を譲渡したこととなり、所得税が課税されます。
【代償分割】
例えば、ある相続人が全ての遺産を相続するかわりに、他の相続人に対してその相続人の相続分に応じた金銭を支払ったり、自分の所有する他の財産を交付する方法をいいます。
代償分割は分割が難しい財産の対処法としてよく用いられていますが、支払を行う側には相応の資力が必要となります。
代償分割をする場合には、その事を遺産分割協議書に記載する事が必要です。
代償分割とは、具体的にどのような分割方法ですか?
ある相続人が全ての遺産を相続するかわりに、他の相続人に対してその相続人の相続分に応じた金銭を支払ったり、自分の所有する他の財産を交付する方法をいいます。
【代償分割】
ある相続人が全ての遺産を相続するかわりに、他の相続人に対してその相続人の相続分に応じた金銭を支払ったり、自分の所有する他の財産を交付する方法をいいます。
代償分割は分割が難しい財産の対処法としてよく用いられていますが、支払を行う側には相応の資力が必要となります。
代償分割をする場合には、その事を遺産分割協議書に記載する事が必要です。
代償分割は、どのような時に利用されるのですか?
代償分割は、財産を細分化するのが不適当と考えられる事業用の不動産や同族会社の株式又は農地等を相続する場合に、よく利用される分割方法です。
【代償分割のメリット】
代償分割は、財産を細分化するのが不適当と考えられる事業用不動産、同族会社の株式又は農地等を相続する場合に、よく利用されます。
代償分割は、分割が困難な財産を相続人間で「とりあえず共有」にしておいて分割問題を先送りにするのでなく、特定の相続人の単独所有としても相続人間で合意が得られるので、将来の「争族」回避対策にも役立ちます。
代償分割により、他の相続人から取得した財産には、贈与税が課税されますか?
相続税の課税対象となります。
【代償分割で取得した財産への課税】
相続税の課税対象となります。
代償財産を交付した相続人は、取得した財産価額から、代償債務として代償交付した財産の価額が控除されます。
夫が死亡し、相続人は、妻である私と、私のお腹にいる胎児の2名となるといわれました。今の状態で遺産分割協議を行えるのでしょうか?
胎児が生まれるのを待ってから、遺産分割協議を行う方がよいでしょう。
【相続人に胎児がいる場合】
胎児の出生前の遺産分割は、可能とする説と不可能とする説があります。
実際の取扱としては、胎児の出生を待つとしても、通常約10か月を経過すれば出生するので、胎児が生まれるのを待ってから遺産分割するのが無難といわれています。
父の相続について、相続人は、認知症である母と長男である私の2人です。
母の成年後見人は私です。遺産分割協議をする際に、母の特別代理人は、成年後見人である私なのでしょうか?
いいえ。お母様と長男であるあなたとでは、相続人間で利益が相反するため、別途特別代理人の選任が必要です。
《相続人間で利益が相反する場合》
遺産分割協議の際、相続人間で利益が相反する場合、特別代理人の選任が必要です。
【利益が相反するとは】
当事者の一方の利益が、他方の不利益になる行為のことをいいます。
生前に被相続人に行っていた家事従事が、寄与分と認められるのは、どのような場合ですか?
相続人が被相続人の事業に従事することで、「相続財産の維持又は増加に寄与」した場合です。
家業従事が特別の寄与に該当するといえるためには、無償性、継続性、専従性、被相続人との身分関係等が問題となります。
《寄与分における家事従事型》
家業従事型とは、相続人が被相続人の事業に従事することで、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
事業の典型例は農業や商工業ですが、医師、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士などの業務を含むとされています。
家業従事が特別の寄与に該当するといえるためには、無償性、継続性、専従性、被相続人との身分関係等が問題となります。
【無償性】
特別の寄与といえるためには寄与行為は原則として無償でなければならないとされています。
もっとも、専従、継続的な寄与行為の場合、寄与行為に対する給付が全くないといった事例は稀であり、何らかの対価的な給付がなされているのが通常です。
この場合、被相続人が、第三者を使用、雇用した場合に行っていたであろう支出と、相続人に対する現実の給付との間に差額がないときには無償性がないものと評価します。
一方、差額がある場合には、その差額をもって寄与分算定の基準とすることになると考えられています。
【継続性】
家業従事者としてなされた寄与行為が特別の寄与といえるためには、相当長期間にわたって継続してなされることが必要とされています。
【専従性】
相続人による家業についての貢献が特別の寄与といえるためには、寄与行為が臨時や片手間になされるのでは足りず、本来自分が従事すべき仕事と同様に携わることが必要とされています。
【被相続人との身分関係】
特別の寄与とは、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超えた貢献をいいます。
したがって、その程度は、被相続人との具体的身分関係によって差異が生ずるものであり、配偶者、子、兄弟姉妹、親族のいずれであるか等によって、同様の寄与行為がある場合でも寄与分の認定上、差が出ることになります。
通常期待される貢献の程度については、一般に配偶者、親子、兄弟姉妹、親族の順序で小さくなり、通常の貢献の程度を超えた場合に初めて特別の寄与として認められることになります。
認知症の母が亡くなるまで療養看護をしていました。寄与分として認められる可能性はありますか?
寄与分の療養看護型に該当し、認められる可能性があります。
《寄与分における療養看護型》
療養看護型とは、相続人が被相続人の療養看護を行ない、付添い看護の費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
実際の療養看護が特別の寄与に該当するといえるためには、被相続人との身分関係上一般的に期待される以上の寄与行為であるほか、継続性、専従性が必要となります。
【継続性】
寄与行為が特別の寄与といえるためには、相当長期間にわたって継続してなされることが必要とされています。
【専従性】
特別の寄与といえるためには、寄与行為が臨時や片手間になされるのでは足りず、本来自分が従事すべき仕事と同様に携わることが必要とされています。
分割協議がまだ調っていない財産は、誰に帰属するのですか?
各共同相続人の共有に属します。
【未分割遺産の帰属】
分割協議が調っていない財産は、各共同相続人の共有に属します。
遺産分割協議が調い、特定の相続人が相続することが確定したら、その分割協議に従い、その相続人の所得として申告します。
祖父が亡くなりました。遺言を残しておらず、相続紛争が深刻化しそうです。一定期間分割協議を行わないようにすることはできないのでしょうか?
家庭裁判所によって、遺産分割を禁じることができるとされています。
ただし、「特別な事由」がある場合に限られます。
《遺産分割の禁止》
相続開始後に「特別の事由」がある場合、家庭裁判所は、遺産の全部又は一部について、期間を定めて分割を禁じることができるとされています。
【特別の事由】
①相続人が若年であり、判断力が成熟するのを待ちたい場合
②相続開始後すぐの分割を認めてしまうと、相続紛争が深刻化することが予想される場合
③一定期間、遺産分割を禁止する実益があるといえる場合
家事従事が特別の寄与と認められるには、どのようなことが求められますか?
「無償性」、「継続性」、「専従性」、「被相続人との身分関係」等が求められます。
【特別の寄与】
家事従事が特別の寄与に該当するためには、以下の4点が問題となります。
①無償性・・・寄与行為は原則として無償でなければなりません。
ただし、専従、継続的な寄与行為の場合、何らかの対価的な給付が行われているのが通常です。
この場合、被相続人が第三者を使用、雇用した場合に行っていたであろう支出と、相続人に対する現実の給付との間に差額がないときには、無償性がないものと評価します。
一方、差額がある場合には、その差額をもって寄与分算定の基準とすることになると考えられています。
②継続性・・・寄与行為は相当長期間にわたって継続してなされることが必要です。
③専従性・・・起用行為は臨時、片手間ではなく、本来自分が従事すべき仕事と同様に携わることが必要です。
④被相続人との身分関係・・・特別の寄与は、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超えた貢献をいいます。その程度は身分関係によって差が生じるため、重要です。
亡くなった父の家業に長年従事しました。給与をもらっていた場合は、寄与分における無償性が認められないでしょうか?
対価的な給付(給与等)がなされている場合、その金額によります。
《寄与行為における無償性》
寄与行為は原則として無償でなければならないとされています。
しかし、専従的かつ継続的な寄与行為の場合、寄与行為に対する給付が全くないといった事例は稀であり、何らかの対価的な給付がなされているのが通常です。
何らかの対価的な給付がなされている場合、被相続人が第三者を使用、雇用した場合に行っていたであろう支出と、相続人に対する現実の給付との間に差額が無いときには無償性がないものと評価します。
一方、差額がある場合には、その差額をもって寄与分算定の基準とすることになると考えられています。
金銭等出資が特別の寄与に該当するとは、どのような場合をいうのですか?
相続人が被相続人に対し、財産上の給付を行い、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
【特別の寄与:金銭等出資型】
寄与分における金銭等出資型とは、相続人が被相続人に対し、財産上の給付を行い、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
例えば、相続人が被相続人に対し、自己所有の不動産を贈与する場合や新規事業の開始、借金返済などのため、金銭を贈与する場合などが挙げられます。
父の生前に、父がリタイアしてから住みたいと言っていた新築マンションの頭金を出しました。これは寄与分の金銭等出資に該当しますか?
無償性と金銭等出資の効果が相続開始時に残存していれば、寄与分に該当すると言えます。
《寄与分における金銭等出資型》
金銭等出資型とは、相続人が被相続人に対し、財産上の給付を行い、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
例えば、相続人が被相続人に対し、自己所有の不動産を贈与する場合や新規事業の開始、借金返済などのため、金銭を贈与する場合などが挙げられます
金銭等出資が寄与分に該当するといえるためには、無償性と金銭等出資の効果が相続開始時に残存していることが必要です。
【無償性】
寄与行為は原則として無償でなければなりません。
ただし、専従、継続的な寄与行為の場合、何らかの対価的な給付が行われているのが通常です。
母が、寝たきりになってから亡くなるまで、引取り、全面的に面倒を見ました。
寄与分として認められるでしょうか?
寄与分として認められる可能性があります。
被相続人を「扶養して、その生活費を賄い、相続財産の維持に寄与」したかどうかがポイントになります。
※質問のケースを寄与分の態様の一つである、「扶養型」といいます。
相続人が被相続人を扶養して、その生活費を賄い、相続財産の維持に寄与する場合をいいます。
《寄与分における扶養型》
扶養型とは、相続人が被相続人を扶養して、その生活費を賄い、相続財産の維持に寄与する場合をいいます。
「扶養して、生活費を賄い、相続財産の維持に寄与」したかどうかがポイントです。
【参考:寄与分の態様】
・家事従事型:相続人が被相続人の事業に従事することで、相続財産の維持または増加に寄与した場合をいいます。
・金銭等出資型:相続人が被相続人に対し、財産上の給付を行い、又は被相続人の借金を返すなどして、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
・療養看護型:相続人が被相続人の療養看護を行い、付き添い看護の費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合をいいます
・財産管理型:相続人が被相続人の財産の管理を行い、管理費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
父が退職してから亡くなるまで、父所有のアパートの清掃や毎月の賃料の受け取りを代行し、維持管理をしました。
他に兄弟がいますが、アパートの管理をしていたのは私だけです。寄与分は認められるでしょうか?
寄与分として認められる可能性があります。
被相続人の「財産の管理を行い、管理費用の支出を免れさせるなどして相続財産の維持に寄与」したかどうかがポイントになります。
※質問のケースを寄与分における財産管理型といいます。
相続人が被相続人の財産の管理を行い、管理費用の支出を免れさせるなどして相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
《寄与分における財産管理型》
寄与分における財産管理型とは、相続人が被相続人の財産の管理を行い、管理費用の支出を免れさせるなどして相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
(例:不動産の賃貸、修繕、保険料や公租公課の支払等)
【参考:寄与分の態様】
・家事従事型:相続人が被相続人の事業に従事することで、相続財産の維持または増加に寄与した場合をいいます。
・金銭等出資型:相続人が被相続人に対し、財産上の給付を行い、又は被相続人の借金を返すなどして、相続財産の維持又は増加に寄与した場合をいいます。
・療養看護型:相続人が被相続人の療養看護を行い、付き添い看護の費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
・財産管理型:相続人が被相続人の財産の管理を行い、管理費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合をいいます。
遺産分割の効力は、相続開始のあった日まで遡ると聞きました。所得税等の取扱いについても、過年分の申告について遡って、修正申告しなければならないでしょうか?
いいえ。所得税等の取扱については、その分割があった日以後の所得からその相続分に応じて申告します。
【遺産分割の効力発生と所得税等の取扱】
民法において、遺産分割の効力は、相続の開始があった日まで遡ることになっています。一方、所得税等の取扱いについては、過年分の申告まで遡って修正するのではなく、その分割があった日以後の所得からその相続分に応じて申告することとされています。
亡くなった父が勤めていた会社から香典をもらいました。とても高額だったのですが、相続財産になるのでしょうか?
死亡退職金とみなされる可能性があります。死亡退職金は「みなし相続財産」です。
【香典】
香典は、社会通念上、相当範囲内では贈与税も相続税もかかりません。
ただし、その金額が相続人の生活保障にあたるほど高額であって、勤めていた会社からの香典であるような場合には、死亡退職金とみなされる場合があります。死亡退職金は、「みなし相続財産」として、相続税が課税されます。