平成30年度税制改正にて小規模宅地等の特例における、いわゆる「家なき子」の適用要件が見直されました。
改正により設けられた2つの要件について、事例を見ながら適用の可否を確認しましょう。
☆☆参考☆☆小規模宅地等の特例全般に関する記事はこちら
◆これを使わない手はない!小規模宅地等の特例
◆詳しく知りたい!特定居住用宅地等
1.従来の「家なき子」の要件
小規模宅地等の特例における特定居住用宅地等について、いわゆる「家なき子」が、該当の宅地等を取得して、特例の適用を受ける場合、被相続人と別居親族(家なき子)それぞれに要件が設けられています。
被相続人の要件
別居親族(家なき子)の要件
2.税制改正にて追加された要件
従来の要件に加えて、次の2つの要件が設けられました。
上記①の要件の「特別の関係のある一定の法人」の範囲は、次の通りです。
上表の「親族等」の範囲については、次の通りです。
3.対象外となる事例を確認
税制改正にて追加された要件により、小規模宅地等の特例の適用ができない場合について、3つの事例をご紹介します。
事例における相続の発生状況
- 相続開始時、被相続人(母)が所有する自宅に居住していた
- 相続人は子1人
事例1 息子が所有してた家屋を4親等の親族に売却後、賃借する場合
息子は、相続開始前3年以内に従弟が所有する家屋に居住しています。
この家屋は、かつて息子が所有していました。
この家屋を従弟に売却した後に、息子が賃借して居住しています。
要件に当てはめて、適用可否を考えてみましょう。
- 従弟は4親等に当たるため、要件Ⅰ(相続開始前3年以内に、その親族の3親等内の親族又はその親族と特別の関係のある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと
)は満たします。 - 息子はかつてこの家屋を所有したことがあるため、要件Ⅱ(相続開始前にその親族が居住している家屋を過去に所有したことがないこと)は満たしません。
事例2 息子が所有していた家屋を特別の関係のない法人に売却後に賃借する場合
息子が相続開始前3年以内に上記要件Ⅰの一定の法人に該当しない法人が所有する家屋に居住しています。
この家屋は、かつて息子が所有していました。
この家屋をこの法人に売却した後に、息子が賃借して居住しています。
要件に当てはめて、適用可否を考えてみましょう。
- 要件Ⅰの一定の法人に該当しない法人であるため、要件Ⅰは満たします。
- 息子はかつてこの家屋を所有していたことがあるため、要件Ⅱは満たしません。
事例3 息子が所有していた家屋はないが、3親等内の親族宅に居住する場合
息子は、相続開始前3年以内に叔父の所有する家屋に居住しています。
息子にかつて所有していた家屋はありません。
要件に当てはめて、適用可否を考えてみましょう。
- 息子は相続開始時に居住している家屋を所有したことがないため、要件Ⅱは満たします。
- 相続開始前3年以内に叔父の所有する家屋に居住しています。叔父は3親等内の親族に当たるため、要件Ⅰを満たしません。
なお、事例3において、息子が相続開始前3年以内に叔父の所有する家屋に居住しておらず、相続開始時から申告期限まで相続した宅地を有する場合には、要件Ⅰも満たすため、小規模宅地等の特例の適用対象となります。