事業承継を考える場合、さまざまな場面で企業の大きさを尺度として優遇措置や法律が制定されています。
その大きさを示す尺度のなかで、『中小企業』とは、どのような企業を指すのでしょうか?
中小企業は、いくつかの法律において定義されています。
今回は、中小企業基本法と中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)における中小企業について、詳しく見ていきましょう。
☆☆参考☆☆経営承継円滑化法に関する記事はこちら
◆「遺留分に関する民法の特例」で後継者へのスムーズな事業承継が可能に!?
◆経営者必見!おさえておきたい相続税の納税猶予制度
◆自社株贈与の切り札か?!贈与税の納税猶予制度
1.中小企業基本法
2.中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)
1.中小企業基本法
中小企業基本法は、中小企業政策の基本的考え方を示した法律で、昭和38年に制定、平成11年に抜本的に改正されました。
中小企業基本法の目的は、中小企業政策について、基本理念・基本方針等を定めるとともに国及び地方公共団体の責務等を規定することにより中小企業に関する施策を総合的に推進し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上を図ることです。
中小企業基本法における中小企業
中小企業基本法では、中小企業を業種分類によって、以下のように定義されています。
中小企業基本法上の「会社」の定義とは?
会社法上の会社を指すものと解されています。
士業法人については、会社法の合名会社の規定を準用して実質的に会社形態をとっていると認められることから、中小企業基本法に規定される「会社」の範囲に含むものとしています。
具体的には、以下のとおりです。
2.中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、経営承継円滑化法)は、平成20年に制定、平成27年に改正されました。
中小企業は、日本の全企業の99.7%を占め、常時雇用者の69.4%が働いており、日本経済において中心的な役割を果たしているといえます。
したがって、中小企業の経営承継は、雇用の確保や地域経済活力維持の観点からきわめて重要です。中小企業の経営承継がされないと、中小企業の持つ貴重な技術力やノウハウの散逸が懸念されます。
中小企業の円滑な経営承継を支援するため、経営承継円滑化法が制定されました。
☆☆参考☆☆経営承継円滑化法に関する記事はこちら
◆「遺留分に関する民法の特例」で後継者へのスムーズな事業承継が可能に!?
◆経営者必見!おさえておきたい相続税の納税猶予制度
◆自社株贈与の切り札か?!贈与税の納税猶予制度
経営承継円滑法の3つの制度
中小企業の円滑な経営承継を図るうえで、次の3点が課題とされていました。
(1)民法上の遺留分の制限
(2)代表者交代による信用不安
(3)自社株式等にかかる多額の相続税・贈与税の負担
この3点の課題を解決するため、以下の3つの制度が導入されました。
経営承継円滑化法における中小企業
経営承継円滑化法の対象となる「中小企業者」の範囲は、中小企業基本法上の「中小企業者」を基本としていますが、業種の実態を踏まえ、政令によりその範囲を拡大しています。
対象となる「中小企業者」の範囲は、次の表のとおりです。
特例の適用が受けられない会社
次の会社は、遺留分に関する民法の特例、相続税・贈与税の納税猶予の適用が受けられません。
まとめ
中小企業基本法と経営承継円滑化法における中小企業の定義について、ポイントは3つです。
①中小企業は、業種分類によって定義されています。
②資本要件=「資本金の額又は出資の総額」、人的要件=「常時使用する従業員の数」のいずれかに該当すれば、中小企業として扱われます。
③経営承継円滑化法における中小企業は、中小企業基本法における中小企業を基本としていますが、「製造業・その他」と「サービス業」において、範囲が拡大されています。